ASHITAYA LAW ― “明日の音”を燃やす蒸気機関車
NOT YOUNGMANのドラマー、ASHITAYA LAW(アシタヤ・ロウ)。
その姿を初めて目にした者は、誰もが一瞬、息を呑む。
金属の質感を思わせる肌、そして頭上には奇妙な煙突のような構造。
彼は“人間”というカテゴリーの外側で生きている。
「今日できることは、明日やろう。」
それが彼の座右の銘であり、彼の生き方そのものだ。
怠惰ではない。彼にとって“明日”とは、まだ音になっていないリズム、
未だ鳴らされていない鼓動のことを意味する。
ASHITAYAは、明日に音を託す男なのだ。
■ 鋼の体と、煙突の頭
ASHITAYA LAWは、古い工場で生まれたと言われている。
冷たい鉄と人の夢を混ぜて作られた“合成人間”。
彼の頭の煙突は、時おり薄い蒸気を上げ、
その煙が漂うたびに、ライブハウスの空気がざわめく。
観客は知っている。
その煙は、彼の中に燃えるリズムの煙だと。
■ プロの音響屋、そして戦場の男
ステージを降りたASHITAYAは、プロの音響技師でもある。
依頼があれば、どんな場所へでも向かう。
砂嵐の吹く砂漠も、銃弾が飛び交う戦地も。
そこに“音”がある限り、彼はマイクを立てる。
彼が収録した銃声、爆音、悲鳴。
それらは時に“戦争を終わらせる音”になるという。
「今、助けを求める声を、明日にはまわせねえよ。」
その言葉には、彼なりの時間哲学が滲む。
“明日やろう”と口にする男が、“今しか救えない音”を拾っている。
それが彼の矛盾であり、優しさであり、戦う理由だ。
■ 叩かないドラマー
彼はドラムを叩かない。
ステージ上では、あらかじめ録音した電子ドラムの音を、
自らのマイクに拾わせて鳴らしている。
その光景は一見、欺瞞のようでいて、
実は究極の“音響表現”である。
音を支配するのではなく、音に委ねる――
それがASHITAYA LAWという男の美学だ。
観客はその事実を知っていてもなお、
彼の一打が生きていると感じる。
それは彼の音が、時間を超えて鳴り続けているからだ。